第39回

 ピアノの曲ばかり聴いていると、ピアノと文字が似ていることに気がついた。どちらも一つ一つの記号が微妙な差により細かく分類され、さらに記号の集合が大きな意味を作り出していく。
 微妙な差は他の楽器でも芸術でも大切だが、その表現は少ない記号に託され、使い手の自由裁量によるものが大きい。文字とピアノを扱う者は感情を持ち込む前段階である巨大な理屈がまとわりつく。