第45回
何のために表現するか、
一つはよくわからない自分自身のことを明らかにするため、
もう一つは周囲に自分という存在を働きかけるため、
この二種類に分けられるものだと思います。
けれど、この二つが同じ方向に向くためには努力が必要だし、
受け取る側はこの二つを最初から同じものだと考える人もいます。
作り手と受け手が作品においてだけしか会話が成立しない理由です。
誰も自分の今が間違っていると考えたくないからです。
本当は、作者とその作品を作った時の人格は、違います。
けれど作者は別の人格の手柄を自分のものにしたい。
批評家と批評する人格は、違います。
けれど批評家は批評した時の全能感を自分のものと考えたい。
永遠に罵倒し続ける関係は、お互いが内面を偽っているから生まれるし、
その偽り具合によっては、建前としてでも素晴らしい調和が生まれます。