第44回

『信心について』


 愛を信じたとする。
 この世には愛せる人がいて、愛せない人がいる。
 愛を信じる人間は、愛せないものを抹殺する。


 処刑の方法は千差万別。どう殺すのかは信者次第。
 彼らは死神を呼ぶことを好む。
 透明な、匿名の、それでいて彼らの兄弟であるもの。


 自分が今、一つの可能性を棄てようとしている。
 死神は自分と同じ穴倉からやってくる。
 目の前にある幻像が、線の向こうに追いやられる。


 今が壊れた時、自分は死ぬ。死神に道連れにされて。
 自分には泣き喚くだけの価値がない。
 比べられ、消えていく、砂の城