愚考

 面白いってどういうことだろう。面白いと思うには、そうであるものとそうでないものの区別がつかなければいけない。すなわち自分の中で何が面白いかという判断基準があるということだが、それは果たして万人共通なのだろうか。
 口を揃えて面白い、面白くないと言える作品は存在している、のか。そもそも揃える口とはどれほどの人数なのだろう。すべてのものを常に追いかけている人などいないし、すべての作品は、どこまでも狭い領域において通じる価値において持て囃され、賞賛されているに過ぎない。どんな分野においても同様だ。その光景は、あたかも小さい宝物を取り合うことに喜びを見出す、幼稚園生のお遊戯とも大差ないのだろう。
 それは侮辱ではなく、むしろ私たちの喜びが子供時代の無邪気なものと変わっていないことは、誇るべきことだ。大人とは、誰かよりたくさんの物事を知り、誰かより綺麗な言葉を使い、誰かより心が汲み取れるというそれだけのことでしかないことを、私たちは誰だって心得ているはずなのだから。もしすべての作品に共通する面白さがあるとすれば、きっとそれは子供をさらに遡り、もう覚えていない頃、まだ自我すら芽生えていない頃の自分が何を思い、感じていたか。そこにはきっと私たちの真の本質すら眠っているのだろう。まだ誰も到達したことのない何かが、まだまだそこには残されているのだ。